教育学部とは
教育学部は、学校教員の育成を目的とした学部で、卒業と同時に教員免許が取得できます。
教育学部で学べる内容が大学によって異なり、幼小中高特のうち一部の校種の教育養成課程を設置しているところや、教育学の研究が中心の大学もあります。志望している大学は取得できる教員免許を必ず確認しておきましょう。
中学・高校の場合、専攻分野の内容に応じて教育養成課程のない学部・学科でも取得可能ですが、小学校の教員免許は課程認定を受けた大学・学部でしか取得できません。
教育養成課程では、複数の教員免許が取得可能です。幼稚園と小学校、小学校と中学校など、複数の免許を取得しておくことは就職において強みになります。
教育学とは
生徒や学生が成長するために、どのような教育を施せばいいのかを考える学問です。教育学は学校教育だけではなく、家庭教育やしつけ、文部科学省の政策なども当てはまります。
教育の歴史や実際の教育現場など、人と社会の関係について深く理解します。
そのため、文学や社会学、心理学などさまざま分野の理解も必要です。学術的な分野だけではなく、映画や小説、演劇などからも学べるでしょう。
教育学部で学ぶ内容
教育学部では主に4つのことを学びます。
- 哲学
- 歴史
- 人間学
- 臨床哲学
に分けられます。
哲学
「教育とは何か」から始まり、教育についての根本的な答えについて考えていきます。こうした常識を問い直すような内容で、哲学・思想を学びます。
歴史
教育がどのような歴史を辿っていったのかを知ることで、どうして今の教育制度になっているのかを考える機会となります。
人間学
人間学とは人間に対する学問です。心理学や言語学などを含みます。人間がどのように考え、成長していくのかを探っていくことで教育を考えていきます。
臨床哲学
哲学や歴史を通して教育について考えられても、現場で落とし込めなくては意味がありません。想定外の時、何が問題なのか考える力を身につけていきます。
教育学部のカリキュラム
1・2年次は教育学といった専門必修科目を履修した後、3年次は専門研究と進みます。必要な単位を履修すれば教員免許の取得が可能です。
講義内容は大学によって特色があり、国際理解教育といった異文化での教育について研究する講義や、教育や社会とのかかわりを解明する講義などがあります。
教育学部の選び方
将来的に働きたい地域の大学を選びたいところです。公立校だと地元の教育学部の卒業生が数多くいて、働き始めてからも先輩・後輩のつながりがあります。
教員として働くことを目指し、大学を選ぶといいでしょう。
教育学部の学費
教育学部は他の文系学部と同様、特別な研究費用が必要ないため平均的な学費です。
初年度の納付金の平均額は以下の様になっています。
- 授業料:772,283円
- 入学料:237,052円
- 施設設備費:167,513円
- 合計:1,176,847円
学費の負担が大きい場合は、奨学金の利用を検討してもいいでしょう。
その他にもさまざまな出費があります。一人暮らしをする場合、さらに敷金・礼金、家電の購入費、家賃など数十万円かかります。
教育学部に向いている人
地域のために尽くしたいという気持ちやどのような人でも教育によって成長できると考えられる人に向いているといえるでしょう。
小・中・高と素晴らしい先生に巡り合えたことで、あの先生のようになりたいと先生を目指す人は多くいます。
また、学校教育において不満に思うところを改善したいという視点も大切です。
日ごろから何事にも興味を持ち、どうしてそうなったのか考えてみる思考を持っておくといいでしょう。
面白い授業をする先生がいれば、どうしてこの先生の授業は面白いのかと考えてみてください。また、どうして微分積分を習うのかと学ぶ意味にも目を向けるとさまざまな角度からとらえられるようになるでしょう。
学校の授業だけではありません。小説を読んだり、映画を見たりすることも興味を深めるのに役立ちます。
教育学部の男女比・雰囲気
教育学部は男女比が同じくらいか、女性が若干多めとなっている大学が多いようです。どちらかに大きく偏っていることはありません。
教員になりたいという明確な目標を持っているため、雰囲気も真面目です。
教育学部は国立大学が多いため、入試の難易度が高めです。そのため、きちんと勉強できる真面目なタイプが多く集まります。
学生の性格は人に教えるのが好きで、面倒見のよい人が多いようです。
教員を育てることも目的の一つなので、教授も教育に対してこだわりをもっている人が多く、講義を楽しく受けられます。
教育学部は他学部から離れた場所にあることが多く、他学部の学生と交流しにくいという意見もあります。
教育実習について
教員免許を取得するには、原則として小学校では4週間、中学校は3週間、高校・特別支援学校では2週間の教育実習が必要となります。
3年次または4年次に教育実習を行うことが多く、3年次は小学校、4年次は中学校と複数の校種で実習も可能です。
実習では指導担当の先生のもとで、教材研究や学習指導案の作成に取り組み実際の授業を担当します。
授業後、見学した先生や他の実習生と意見交換をしながら、よりよい授業ができるように知識や技術の向上を目指していきます。
卒業後に就職できる仕事
教員免許を取得できる見込みの場合、教員採用試験を受験し先生を目指す場合がほとんどです。
近年は定年退職者の増加により、採用数の拡大傾向にありますが、地域によって競争率が高く狭き門となっています。
そのため、公務員や民間の教育関連の企業へ就職する人も少なくありません。
また私立の場合、院卒を優先的に採用する学校もあるため、大学院へ進学する人もいます。
大学によっても異なり、教員への就職率が8割占める大学もあれば、半数が一般企業へ就職する大学もあります。
早稲田大学の場合、9割は一般企業へ就職するそうです。
先生を目指す場合、公立校は各地方自治体が実施する教員採用試験を、私立校は各法人や学校の採用試験を受験します。
公立校に合格すると「教員採用候補者名簿」に登録され、赴任先の学校が決定する流れです。
小学校だと初年度から担任をもつケースもありますが、多くの場合初任者研修で基礎を身につけられるよう配慮してくれます。
指導教員が割り当てられ、個別に相談できる制度があるので、積極的に活用するといいでしょう。
教員採用試験の内容
各地方自治体で7月ごろに1次試験が始まり、9~10月に合格発表となるので、多くの人はこの時期にあわせて勉強します。
1次試験では教育科目と専門科目、論文が課せられ、2次試験では面接となります。1次試験は大学で学んだことを発揮すれば対応できるはずです。
面接は人間性やコミュニケーション能力が測られます。
不採用となった場合、期限付き任用や非常勤講師として働きながら、次の採用試験に向けて再度受験をする人が多いようです。
まとめ
教員になるという明確な目標を持って教育学部を選んだ人が多いため、目的達成に向けて学んできたという充実感が得られるようです。
さらに同じ目標に向かっている仲間が多く、一体感が生まれやすいという声もありました。
反面、実習を通して児童・生徒へ教えることの難しさや、予想外のことが起きたときの対応など、教育の難しさを実感する意見も多くあります。
人を育てるという分野に興味を持つ人が進む学部です。だからといって必ずしも教師にならないといけないというわけではありません。
将来的に教育に関わる仕事に就きたいと考えている人におすすめします。